福田印刷工業 福田ブログ

神戸・東京に拠点を構える印刷会社。印刷関係の話からなんでもないようなことまで。

社内報

社内報はなぜ今、必要なのか――中小企業におけるコミュニケーションの起点として

少子高齢化、人材不足、働き方の多様化――こうした社会構造の変化は、中小企業の経営に大きな影響を与えています。特に「人」に関する課題、すなわち「社員の定着」や「エンゲージメントの向上」「組織内の連携不足」などは、多くの企業にとって喫緊の課題ではないでしょうか。

そこで今、再注目されているのが「社内報」の存在です。

社内報は単なる情報伝達ツールではありません。会社と社員をつなぎ、価値観を共有し、組織としての一体感を醸成するための重要なコミュニケーションツールです。この記事では、なぜ今中小企業に社内報が必要なのか、その目的と編集方針、媒体の選び方、さらに社内報によるコミュニケーション活性化の成功事例まで、詳しくご紹介します。

社員の「関心の断絶」が組織の分断を生む

日本の労働人口は今後ますます減少すると言われています。人材の確保が困難になる一方で、優秀な人材ほど流動化が進み、「この会社で働き続けたい」と思える環境づくりが企業に強く求められています。

しかし実際の現場では、社員が自部門の仕事に追われ、他部門や会社全体への関心を持てなくなっているケースが少なくありません。営業と製造、管理部門と現場、経営層と若手社員。部門や立場の違いによって、考え方や情報の格差が広がり、それがやがて“関心の断絶”を生み出していきます。

このような状態では、会社が掲げるビジョンや方向性が社員に伝わらず、組織としての一体感が薄れ、離職やモチベーション低下にもつながりかねません。

人材の流出を防ぎ、少ない人数でも高い力を発揮できる組織を目指すには、まず社内の意識をつなぎ直すことが不可欠です。その起点となるのが、「共通の言語」と「共通の理解」を育む社内コミュニケーションであり、その核となりうる社内報が果たす役割はますます重要になってきています。

社内報の目的とは

社内報の目的は各社それぞれ異なりますが、大きくは以下のように5つに分けられます。

  1. 経営方針やビジョンの浸透
    会社の進む方向を全社員で共有することで、共感や理解を得られ団結感が増します。そのために経営者の想いや戦略を社員にわかりやすく伝えます。
  2. 部門間の相互理解を促進
    組織全体の一体感を高めるために、部署や拠点を超えた取り組みや社員の活躍を紹介します。
  3. 企業風土や文化の醸成
    帰属意識を高めるために、企業の創業ストーリーなど歴史的な物語や安心して働ける職場づくりなどを紹介します。
  4. 社内コミュニケーションの活性化
    普段関わらない人同士の会話のきっかけをつくり仲間意識を強めるために、人となりが見える記事や社員参加型の企画を組み入れます。
  5. 社会との信頼関係構築
    社会貢献など会社が社会で果たす役割を再認識するため、CSRなど企業の社会的活動など広く社会との関わり方を周知します。

紙とWeb、社内報の媒体選びのポイント

読んでもらうためには媒体選びも重要です。現在の社内報は、紙媒体に限らずWebやアプリでの配信も多くなっています。それぞれにメリットがあるため、自社に合った媒体選びがポイントになります。

紙の社内報のメリット

手に取って読むことで「特別感」がある
手元にあることで、ふとしたときにでも読まれやすい
経営方針など何度も読み返す記事は読みやすい
社員の家族にも届きやすい

Web社内報のメリット

速報性に優れ、更新が容易
閲覧データを分析できる(人気コンテンツ、未読率など)
動画やリンクで情報拡張が可能
スマホ対応で外出先からでも読める

ハイブリッド型(紙+Web)で併用している企業も増えており、たとえば年2回は紙でしっかり届け、月次ではWebで速報性を活かすというスタイルもあります。

実際の事例:社内報が生んだコミュニケーション変化

ここでは、当社が携わった案件ではありませんが、実際に社内報を活用して社内コミュニケーションを活性化している企業の事例をご紹介します。

【事例:カゴメ株式会社】
カゴメ株式会社では、紙と動画を組み合わせたクロスメディア型の社内報を運用し、社員のエンゲージメントや社内の一体感を高めています。

取り組み
カゴメでは、四半期ごとに紙媒体『カゴメ通信』と動画社内報『カゴメ通信 The Movie』を連動させて発行・配信しています。

  • 紙媒体『カゴメ通信』
     経営方針の解説や現場の声、特集記事など、読み応えのある内容で深掘り。
  • 動画社内報『カゴメ通信 The Movie』
     現場のリアルな表情や声を動画で届け、社員の臨場感や共感を引き出す。

この2つはテーマを共有し、紙で理解を深め、動画で感情に訴えるという補完関係になっています。

編集方針としては「会社のことを自分ごとに」と「コミュニケーション・働き方へアプローチ」の2軸を掲げ、現場社員の声を積極的に取り上げる中立的なメディアとして運用されています。

社内報の導入・改善を成功させるために

最後に、社内報導入・改善を成功させるためのポイントを整理します。

目的を明確にする
→何のために社内報を発行するのか?この目的を明確にしたうえで編集方針を定めましょう。発行後のブレないコンテンツ制作が可能です。

対象読者のニーズを知る
→どんな情報がほしいのか、アンケートやヒアリングで探りましょう。

編集チームの体制を整える
→継続していくためには、外注でも社内でも担当者だけに任せず複数人で運営する体制が理想です。

効果測定をする
→Webであれば閲覧数、紙であればアンケートや声を集めて改善に活かしましょう。

継続すること
→社内報の効果は「継続」と「蓄積」によってじわじわと現れます。

まとめ:社内報で“社内文化”をつくる

社内報は、企業の文化や価値観を可視化し、共有し、育てていくためのツールです。特に中小企業では、経営層と現場の距離が近い反面、部署間の役割が多岐にわたり、情報の非対称性が生まれやすいという特徴があります。

だからこそ、社内報という「共通のプラットフォーム」が大きな意味を持つのです。

「社内報は手間がかかる」「読まれないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、だからこそチャンスでもあります。社内報を軸に、社員一人ひとりが組織の一員として誇りを持ち、つながりを感じられる職場づくりに、今こそ一歩踏み出してみませんか。

 

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