【実績紹介】日本燐寸工業会様「国産マッチ150年記念誌」制作
「マッチ」という言葉を聞いて、どんな情景が浮かぶでしょうか。ろうそくに火を灯すとき、キャンプの焚き火、あるいは子どもの頃に眺めた色とりどりのマッチ箱――。そんな懐かしい日常の風景を、150年にわたって支え続けてきたのが日本のマッチ産業です。
このたび弊社では、国産マッチ創業150年を記念する記念誌の制作をお手伝いする機会をいただきました。本記事では、その制作の背景と取り組み、そしてこだわりのポイントをご紹介します。
日本燐寸工業会様の源流は、明治時代の兵庫県燐寸製造組合であり、約140年にわたって日本のマッチ産業を牽引してきた歴史ある業界団体です。日本のマッチ製造は、1875年(明治8年)に始まったとされ、最盛期には輸出産業の柱として日本経済を支えていました。その長い歴史の中で培われてきた技術・文化・人々の記録を、150年という節目にしっかりと形に残す――それが今回の記念誌制作の使命でした。
制作のポイント① 「歴史を感じさせる」デザイン設計
記念誌づくりで最初に向き合ったのが、デザインの方向性です。150年という重みをどう表現するか。モダンで洗練されたデザインにするか、あるいは時代の薫りを大切にするか。
今回はクライアントと丁寧に協議を重ね、「現代の読みやすさを保ちながら、歴史の温かみと重厚感を感じさせる」というコンセプトに落ち着きました。書体の選定、用紙の質感、配色、罫線や飾りのデザインに至るまで、すべてにおいて「昭和・大正の雰囲気をどこかに宿す」ことを意識しています。単なるレトロデザインにならないよう、現代の読者が手に取っても違和感のない、品格あるビジュアルを目指しました。
制作のポイント② 多彩なコンテンツと、それを束ねる組版の力
この記念誌の最大の特徴は、コンテンツの多様性にあります。
- インタビュー記事:業界関係者の肉声を読み物として構成
- 年表:150年分の歴史を視覚的に整理したタイムライン
- 資料集:当時の統計データや貴重な文献資料
- マッチ箱デザイン集:時代ごとのマッチラベルを集めたビジュアルページ
- 昔のマッチ関連新聞記事:実際の紙面を再現・掲載したアーカイブページ
これほど異なる性格のコンテンツが一冊に並ぶと、ともすれば「寄せ集め感」が出てしまうのが記念誌制作の難しさです。今回特にこだわったのが、多彩なページを通して一冊としてのまとまりを保つことでした。
章をまたいでも共通して使える見出しのデザインルールを設け、フォントや罫線のスタイルに一貫性を持たせることで、どのページを開いても同じ記念誌の世界観の中にいられるよう設計しました。また、行間の取り方にも細心の注意を払っています。資料的なページでは情報を整然と収めながらも詰め込みすぎず、読み物のページではゆったりとした行間で読みやすさを優先するなど、コンテンツの性格に合わせた調整を積み重ねました。さらに、年表や資料集では文字サイズ・字間の微調整でページ内に過不足なく収め、マッチ箱デザイン集では余白の使い方に気を配るなど、「読みやすく、かつ美しく収める」ための見直しを何度も繰り返しました。
制作のポイント③ 歴史資料ならではの校正の難しさ
組版と並行して丁寧に取り組んだのが校正作業です。歴史的な資料を多数扱う記念誌では、通常の校正とは異なる難しさがありました。
まず直面したのが、古い社名・団体名の確認です。掲載する資料の中には、現在はすでに存在しない企業名や組織名が少なからず登場します。資料によっては異なる表記がされている場合がありますので、表記のゆれがないように、また読者が誤解しないよう文脈を整え、確認しながら作業を進めました。
また、人名の確認にも時間を費やしました。インタビューや年表に登場する人名は、誤字や表記のゆれが許されない箇所です。業界ゆかりの方々のお名前を一件一件照合し、全体を通して問題がないかを慎重に確認しました。
次に難しかったのが、旧字体への対応です。古い文献をそのまま引用する箇所では、現在の常用漢字とは異なる字体が頻出します。歴史的な雰囲気を残したいという意図と、読みやすさ・正確さのバランスをどこで取るか。校正担当とライターが何度も確認を行い、どの文字を現代の字体に改めるかを一字ずつ判断していきました。
そして最も手間がかかったのが、年表の前後整合性と和暦・西暦の照合です。150年分の出来事を並べた年表は必然的に長大なものになります。和暦と西暦の対応に誤りがないか、出来事の順序に矛盾がないか、表記が途中で変わっていないか――細部まで目を通し、正確性を担保するための確認作業は、校正工程の中でも特に集中力を要するものでした。

制作を終えて
完成した記念誌は、2025年11月に開催された記念式典でお披露目されました。関係者の方々に「これだけの歴史がきちんと残せた」と喜んでいただけたことが、制作チーム一同の大きな誇りです。
デザイン・組版・校正のすべてが揃って初めて、記念誌は「信頼できる一冊」になります。弊社は、大切な節目の記録を残すプロジェクトに、DTPの技術と丁寧な制作体制、印刷のノウハウを持って全力でお応えします。
周年記念誌・社史・記念冊子の制作をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。